6.堆積環境(1):山 から 海への 環境・プロセスの移り変わり


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地学概論A第6回_復習問題.pdf
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 砕屑物のうち、大きさの範囲が広すぎて使いにくい用語が礫(れき)です。

 

 細礫(Granule)と言われる、大きさ2mm-4mmの物が礫の最小サイズです。半透明~茶色で粗粒のコーヒーシュガー や 綿菓子に使う薄茶・透明の結晶のような砂糖(ザラメ)もこの大きさです。

 

 その上の大きさが、中礫(4mm-64mm)の物で、いわゆる砂利(ジャリ・Pebble)や小石を含みます。

 

↓河原の石も礫です(映画「おくりびと 」に登場した河原)。

 

 いろんな大きさの礫がありますが、映画の中、この瓦の上で モッくん(本木雅弘) が 広末涼子に手渡したのは、多分 中礫でしょう。

 

↓これも 礫です(映画「アナと雪の女王」より)。64mm-256mmの物は大礫、256mm以上の物は巨礫と呼ばれますので、トロル達は全員巨礫に分類されます。巨礫が礫の最大サイズで、256mm以上は全て巨礫になります。

 

 だから礫という単語も、礫の分類も不便なのです。


↓この人が担いで運んだのも 礫です。


 巨人(エレン巨人体)が持ち上げた直径数十メートルの大岩も、直径数十センチのトロルたちもどちらも 巨礫(礫の最大クラス)というのは、進撃ファン(特にエレン ファン)には納得いかないかもしれませんね。礫も巨人のように「30メートル級」「5メートル級」と読んだ方が実用的・便利だと思います。

 

【上・下の図の補足説明】 

  粒径が大きい(重い)ほど流されにくいので、堆積しやすく、侵食されにくいです。川の底に礫が多いのはそのためです。泥や砂は流されやすく、泥は水に浮遊するだけでなく、溶解して(イオン化した粘土鉱物として)運ばれる事もありますし、のちにこれらのイオンが凝集して(コロイド状になって)泥の粒に戻り(析出し)、(泥水のように)浮遊したり、流れが弱くなると沈殿(堆積)したりします。

 

 また、川の流れ(流速)がだんだん大きくなると、砂どころか礫でさえも、運搬されるようになり、川底などが浸食されたりします。

 

 この粒径と流速の関係をまとめたのが、以下の図です。高校地学の教科書によく登場します。

 

 砕屑物の粒径や流水の速度によって、堆積・運搬(ここでは堆積と浸食の平衡状態のようなもの)・侵食が決まる、という物ですが、下のグラフのようにハッキリした境界があるわけではありませんので、眉唾的なものです。


  そこで、上の図を丁寧に解釈し直すと、以下の図のようになります。

 

 以下のビデオだと、7:35~11:25 の 所に 相当します。このグラフの伝統的な(良い方への)解釈法としては、教科書などを読むよりも、以下のビデオを観たほうが解りやすいです。礫など、粒径の大きいものほど運ばれにくいのですが、この先生の仰っているように、川底などで流速がだんだん上がる時に最初に運ばれるのは泥ではなく、細粒の砂なのです。泥は細かく イオン化しやすく、そうなると電荷が引き合って凝集し、バラバラになりにくなります。長靴やリュック・ズボンに付いた泥が落ちにくいのと似て居ます。

 

 実はこのグラフ(の前提)には致命的な欠点【授業中にこのグラフを使う際の注意点が2つあります、と言いましたが、そのうち説明を省いた、2つ目の注意点】があるので、堆積物を専門とする学者さん(私もその一人)は殆ど使っていません。ですから、将来は高校地学のテキストから消えるか、あるいは地学の授業で、その2つ目の欠点も きちんと教える必要が出てくると思います。このグラフ・図(上の予備校のビデオも含む)の その大いなる欠点とは、堆積物(砕屑物)の収支(例えば、上流からの砂の供給量)が考慮されていない事です。


 例えば、直径1mmの砂ばかりの川底があったとしましょう。上の図からすると、この川では流速が 6 cm/s 以上になると砂の一部が動き始め、35 cm/s 以上になると、侵食が始まります(侵食された砂は、下流へ移動します。つまりここでも運動・運搬は起こっているのです)。

 

 しかし、上流から砂が供給されなければ(水しか流れてこなければ)、この1mm径の砂だけからなる川底の砂は全て、下流に流れてしまい、ついには砂がなくなってしまうので、上のグラフで流れが6 cm/s 以上になれば、浸食も始まるわけです(上流からの砂の供給量がゼロでなくても、

[上流からの供給量] < [下流へ運ばれる量]

であれば、浸食が起こりますよね)。

 

 逆に、35 cm/s を少し超えるくらいの流れであったとしても、上流から多量の砂が流れてくれば、堆積する量の方が、侵食されたり下流へ運ばれる量を上回り、堆積が起こります。扇状地やデルタが堆積するのも、同じ原理です(上流から多量の土砂が運ばれ、地形が開けたところに出るために、流速も急に遅くなるため)。

 

 川の堆積物(砕屑物:礫・砂・泥)の殆どは、増水・洪水などで、流速(と上流からの堆積物の量)が増した時に動き、運搬だけでなく、侵食なども起こります。そして、洪水が治まったり、減水し、流速が落ちた時に堆積が起こるのです。川の礫でさえも、普段は動きませんが、洪水の時に小さな物から動きやすくなり、運搬されるのです(以下の写真を参照)。

 

 以下のビデオの 最初 ~ 1:45 の所で、乱泥流(混濁流)とそれらが深海に堆積して出来た砂岩(タービダイト)について説明してあります。これは「日本列島の誕生・前中後の3分割ビデオ」の中間部にあたるのですが、それ以前のビデオ(南海トラフとプレートとの関係)は前回の授業のWebpageに載せてありますので、そちらも観たい方は前回の授業の Webpage を ご覧ください。


今週のおまけ

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